石巻お盆(その2)クリームソーダ


私にとってクリームソーダは

特別な飲み物だ。


自他共に認める酒飲みの私だから

「クリームソーダが特別」

なんて言うと、意外や意外!と

思われるのは必須だけど

ほんとに大好き大好き大好き!


だけどね、「特別」だから

滅多にお店で頼みません。


訳があります。


私の中のクリームソーダは

確固たるものがあって

心と味覚の中に

(あのクリームソーダ)という

不動の基準があって

それをいつもいつも

恋焦がれているのね。


何というかこだわりがあって。


グラスの形とかスプーンの形とか、例え理想と違っても許せる範囲かとかシロップの色と量で決まるソーダの甘味の加減とか乗っかってるアイスの形とかアイスの脂肪分の問題とか缶詰のサクランボがあるかどうかとその置き方とか氷の量とかストローとその袋の種類とかその添え方とかグラスの下に敷く物とか色々色々うんぬんかんぬん。


「ああ、もういい加減にしろ!」

「勝手にしろ!」という

感じですよね。

ほんと自分でもそう思うんですけど

しょうがないんです。

愛が昂じて拗らせてます。


それというのも、何もかも

石巻のせいなんですよ。


私が子供の頃に親に連れて行かれた

レストランと喫茶店のせい

なんですよ。


そのレストランとは、

何を隠そう、石巻の誇り

「レストランたわらや」


そして昭和の石巻の街で

たくさんの人を幸せにした喫茶店

「しみず」


この2つのお店のクリームソーダ!

美味しかったんです。

幸せだったんです。

この歳になっても

酒飲みになっても

忘れられないんです。


残念ながら

この2つのお店に行くには

タイムマシンに乗るしか

手立てがなくなってしまいました。


私の記憶の中に

生きているクリームソーダ。


ところが!

あったのです。

今の石巻に

私のクリームソーダが!


お店がアップしてくれてる

画像を見て、

(もしかして...これは

私の為のクリームソーダ?)

と思い、ずっと行きたいと

思っていました。


今年のお盆は

石巻に帰省出来る事になって

これはチャーンス!


待ち望んでいた機会に

緊張と期待でバクバクしながら

とうとうそのお店に入りました。

もちろんオーダーは決まってます。

クリームソーダです。


来ました。

クリームソーダです!


飲みました。

クリームソーダです!


食べました。

クリームソーダです!


これです!この味!

私のクリームソーダ!

もう泣きそう。


「たわらや」や「しみず」の

店内の風景が

胸に立ち上がって来ました。


ジジホウダンというこのお店は

かつて「しみず」があった街に

出来た喫茶店です。

お客様がニコニコ次々

やって来ます。


石巻は

街の外側の大きな道路沿いに

チェーン店が

ドッカンドッカン建って

街の真ん中は震災後

古くからあるお店は減ってしまい

歩いて楽しい街の姿は

どんどん無くなっていくのかな...

なんて、

さみしく思っていたこの頃、

どっこいすごいよ。

ありがとうジジホウダン!


クリームソーダだけじゃなく

他のメニューも凄く美味しそうで

このお店ならではの印象です。


きっと時間をかけて何度も試して

1つ1つメニューを作り上げて

来たんだろうなと思いました。


これからも石巻の街と一緒に

ずっとあって欲しいお店です。


しかし喫茶店って

不思議な場所ですね。


過ごした時間はひとときでも

例え誰とも言葉を交わさなくても


ひとつの飲み物が

一生心に残ったりするんですから。


クリームソーダは

ソフトドリンク界の

カクテルのようなものだと

思います。

レシピは共通でも、作り手によって

味も姿もかなり変わる

奥の深いカクテル。

クリームソーダを考えた人って

誰なのでしょう。天才!


実はジジホウダンは

私の姪夫婦のお店です。


しかし私にとってこのお店は、

「可愛い姪っ子夫婦のお店」

ではありません。


「石巻の喫茶店文化を

支えてくれるお店」だと

感じています。


この空間を

毎日作り続けてくれている

若いオーナー夫婦を

私は尊敬しています。