2月は節分。
節分と言えば豆まき。
でも私の実家ではそれに加え、
「宝探し」があった。
は?「宝探し」?って
思われますよね。
これは母が思いついた
我家の恒例行事。
食に意識高い母が
普段は子供に絶対与えない
添加物たっぷりのキラキラお菓子や
カップラーメン、小さなおもちゃを
この日ばかりはたっぷり買い込み
人ばらいをした仏間のあちこちに
巧妙に隠しておくのだ。
豆まきが終わった夜。
仏間の電気は消されて真っ暗。
私達姉妹は茶の間に1列に並んで
スタンディングスタートの
形を取る。
父と母の「用意!スタート!」の
掛け声で、一斉に仏間へ突進する。
毎年、
「お姉ちゃんが押したぁ〜!」
という声が聞こえる気がするけど。
えーと、何故かしら?
暗い仏間の畳を這いずり
座布団の裏や
部屋の隅を探りながら、
あまりにも真剣な自分達に吹き出し
笑いが止まらない。
四つん這いの膝で
さっき蒔いた豆を踏んでは
悲鳴を上げる。
スカートを風呂敷がわりにして
パンツが見えるのも構わず
獲得した物を詰め込む者。
天井から紐でつるしてあった
大きな袋をいち早く引ったくり
新聞紙しか入ってなくて
地団駄を踏む者。
暗いので取った物が何が何だか
わからないのも面白い。
あらかた取り終わると
戦利品を手に四人姉妹は
意気揚々と茶の間に戻る。
長女から末っ子まで
9才も歳の差がある私達。
平等を期する為にも、ここからは
獲得した物を全て出して
ジャンケンをし、あらためて
順番を決め、ドラフト制で
欲しい物を指名して行くのだ。
ドラフトもスリルだ。
自分の欲しい物が最初に指名されて
取られてしまう事もある。
終わってから子供部屋で
「ねぇ、それとこれ、
交換しない?」
などと交渉も起きる。
節分は、とにかく密度の濃い
祭りの夜になるのだった。
時は経ち、末の妹も大きくなり
仏間にお菓子が
隠される事もなくなった頃
次女の妹が仕事を無断欠勤し続け
借りていたアパートにも帰らず
両親とも連絡を絶ち
姿を消してしまった事がある。
妹は、職場や家族に迷惑をかけて
(もう自分は家には帰れない)と
思いつめ、ずっと彼氏の所に
いたらしい。
ある夜、何のはずみか
彼氏に宝探しの話をしてしまった。
笑い話のはずだったのに
話すうちに涙が出て来て
とうとう
泣き出してしまった。
それからしばらくして
妹は実家に
ちゃんと帰って来たのだ。
妹からその話を聞いた時
(ああ、そうか)と
納得してしまった。
かくいう私も
末の妹が大きくなるまで
(宝探しが私を呼んでいる)と
盛岡から普通列車で3時間もかけて
節分に帰省していた。
妹達と興奮で震える
スタンディングスタートを
切る為に。
いい歳の大学生が
道中もワクワクして。
きっと家族との思い出は
可笑しくてバカらしくて、
滑稽であればある程いいのだ。
それはいつか
迷った心に呼びかける
暖かいものに
なるのかもしれないから。
ときめくキラキラのお菓子達
