「ヤセタンとコロンタン」
という歌があった。
「ひらけ!ポンキッキ」という
昭和の子供番組の中に出て来た
ものだと思う。
はっきり言って歌詞はほとんど
覚えていない。
痩せた「ヤセタン」と
ぷっくりの「コロンタン」の
歌だった。
(そのまんまやん)
幼い私は
歌の始めをちょこっと聴いて
(私と妹みたいだなー)と
勝手に思っていた。
小さな頃の私と妹は
いつも一緒の
ヤセタンとコロンタン。
食が細く、夜は寝つきが悪い
痩せっぽちの私と
ご飯を美味しく食べて
夜もぐっすり眠れる
コロンタン体型の妹。
2人で遊んでいて
私が急に走り出すと妹は
「おねぇちゃん まってー!」と
慌てて後ろをついて来ては
コロンと転んで泣いていた。
だから
「おねぇちゃんまってー!」
の後には必ず
「あっっ!」という悲鳴と泣き声が
セットになっているのだ。
私は妹の「あっっ!」に
気がついて振り返り
泣いてる妹を
助け起こしに走って戻る。
何度も何度も
くり返された思い出だ。
さて、興味も表現方法も
全く違うタイプの私達姉妹は
成長するにつれて
それぞれの場所で走り始める。
どちらかと言うと頑固で
自分の世界に閉じこもり
ひたすらそれを追求する私と、
世の中の「今」に敏感で
新しい事が大好きな妹。
走る場所は自ずと分かれて行く。
あの子は私の背中ではなく
自分の行きたい場所を
どんどん見つけて
それに向かって走っていった。
世の中には
パソコン、インターネット
というものが登場し、
まもなく妹は
仲間と共同でその関係の会社を
立ち上げた。
近況を聞くたびに
自分とは違う妹らしさが
眩しかった。
昔から
新しい事に飛び込む勇気と
好奇心に見合う努力の
出来る子だった。
それぞれ離れた場所で
日常を生きる私達だったけれど
時々目配せしながら
互いにエールを送り合って
走っているつもりだった。
これからも常に
あの子らしくいられる場所で
転んでも起き上がり
走り続けるに違いない。
そう思っていた。
だけどある日
妹は突然倒れ
いきなり
手の届かない場所へ
行ってしまった。
慌てて走り寄っても
私は間に合わなかった。
幼い頃なら
すぐ後ろで転んでくれたのに。
大きくなった優しいあの子は
我慢強くなりすぎていた。
あの子の明るい声を
うのみにして
駆け寄るのが遅れた。
病院で意識が戻った妹は
私の顔を見て
何も問いかけていないのに
「働き過ぎちゃったの」
「ごめんね」と言った。
私の顔に
(こんなんなって倒れるまで
何してたんだ。馬鹿野郎!)
とでも書いてあったのだろうか。
違う。
馬鹿だったのは私だ。
きっとあの子は
電話で聞かせる明るい声の下で
「あっっ!」って
言ってたのかもしれないのに。
(気がつかなくてごめん
すぐに走って側に行かなくて
ごめん)
謝らなくてはならないのは
私の方だった。
幼い頃コロンタンだった妹。
私に眩しい背中を見せて
泣き顔を隠したまま
あっという間に
遠くへ行ってしまった。
本当に走るのが速かったのは
あの子の方だったのだ。
もう私は
「となりのトトロ」というアニメを
泣かずに見る自信はない。
サツキとメイに
自分と妹を重ねてしまうからだ。
あんな感じでいつも2人一緒に
走り回っていた。
でも性格の本質は
妹の方が、
優しく我慢強いお姉さんの
「サツキ」だったのだと思う。
